上山ラプソディ

アスリートから外資系企業を経て山形へ

大学時代に出会ったスキーオリエンテーリング競技にのめり込み、卒業後は本場のスウェーデンに留学。アスリートとして活動してきました。帰国後もフリーランスとして仕事をしながら競技活動を続けてきましたが、体力的にも限界が来た頃に、都内の外資系企業に就職しました。しかし、このまま大きな会社の中で働いていくことに違和感を覚え、山形に戻って地域を元気にする仕事がしたいという気持ちが芽生えました。2017年に実家の建築会社が飯豊にホテルを建てるタイミングで、Uターンしてホテル経営を開始。他にも南陽市でレストランを経営しており、コロナ禍も何とか乗り越えましたが、山形のマーケットの限界も見えてきました。より多くの観光客の方に来ていただくことでホテルやレストラン需要も伸びるのではと考えていた時に、水没林カヌーにはその可能性があると感じたのです。

海外に負けない山形の自然のポテンシャル

海外や他県と比べて、山形の自然にはポテンシャルがあると感じていました。総合的に四季が豊かで、冬はこれだけ雪が積もり、夏は本当に暑い。季節の幅が広いのです。常に目まぐるしく変化しているので、ここに住みながら世界中を旅行しているような、いろんな光景を見ることができる。雪の量が多いのも世界的には珍しい。例えば北欧では寒過ぎて雪がサラサラなので、山形でできるような雪遊びができない。この温度帯でこんなに雪が降る魅力や価値をとても感じました。自然から生まれる食も豊かで。他の国ではそこまでバリエーションはありません。この自然こそが山形の魅力なのだと確信しました。

上山・氷瀑との出会い

もともとホテル事業と同時に白川湖の水没林でのカヌー体験もご案内していました。飯豊連邦から大量の雪解け水が流れ込んできてできる水没林は幻想的で本当に美しい。これは山形の観光の一つになり得ると確信し、ホテルとレストランは事業譲渡して、アウトドアガイドに専念することを決意しました。カヌー以外にもフィールドを広げ、南陽市では気球に乗って雲海を眺める体験、里山でのスノーシューツアーなども開始。他にも山形の魅力があるのではないかと開拓していく中で、上山の蔵王にある氷瀑に出会いました。最初は家族で訪れたのですが、個人の方も何人も来られていて、現地の方からは安全の課題があるということを耳にしました。経験もなく訪れるにはリスクが高い場所です。信頼できるガイドが付いて、その日行けるかどうか、参加者のスキルなども複合的に判断してツアーとして実施できれば、より多くの方に山形の魅力を提供できるのかなと。常設のガイドツアーはなかったので、ルートなどを整備して地域振興にも繋げていきたい。

氷瀑だけではない雪山の魅力

氷瀑を見た感動は言葉では言い表せないほどですね。参加者の皆さんには、本当に来て良かったと言っていただけています。一方で氷瀑ツアーの魅力はというと、実は氷瀑自体はその1/3くらい。氷瀑以外にもコースの中で私たちガイドがお伝えしたいポイントが様々ありまして。ふかふかの雪の上に寝転んだり、ブナ林の中をスノートレッキングしたり、樹氷の中に入れるトレッキングなど。クマの引っ掻き傷がある木のそばを歩くこともあります。ネイチャートレッキングの要素も楽しんでいただけている。それらは商品としては地味なので選ばれないことが多いのですが、実際に体験してみると、動物たちの気配や、雪の豊かさ、山形の自然本来の魅力を感じていただけるんです。

自然の中で生まれるコミュニケーション

旅行に来ても地元の方と話す機会は少ないものです。でも氷瀑ツアーの場合は4時間ほど一緒に行動をともにするので、コースの説明だけでなく、山形の暮らしのこと、お客様のお仕事のことなど、コミュニケーションが自然に生まれるのも魅力の一つだと言っていただけます。人と人とのつながりが何よりも価値なのかなと思いますね。四国から氷瀑に来てくれたお客様が2ヶ月後には水没林のカヌーに来てくれたこともあります。私たちにわざわざ会いに来てくださった。仕事を超えた信頼関係も生まれているのかなと思いますね。まさに関係人口ですね。現在インバウンドのお客様の割合は1%くらいですが、より多くの方に日本・山形の自然を体験していただきたいです。

「上山は美味しいワインもたくさんありますし、かみのやま温泉、蔵王、お釜と山形を代表するエリア。新幹線の駅もあり、観光の起点になる場所です」と客観的視点で上山の可能性を話してくれた堀江さん。そのフィールドを山形全体に広げていきたいと話す。山形観光の拠点となり得る上山を中心に、地域と地域を結びつけ、山形を発信する重要な役割を担う存在となるはずだ。