上山ラプソディ

憧れ続けた理想のワイナリー

♯14

憧れ続けた理想のワイナリー

木村義廣さん

自社の畑で採れたぶどうのみでワインを作るドメーヌワイナリー、ウッディファーム&ワイナリー代表。若き果樹農家が夢見たワイナリーは20年以上の時を経て実現した。その想いとこだわりは1本のワインボトルに詰め込まれている。

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先を見据えたワイン用ぶどう栽培がスタート

木村家はもともと養蚕農家でしたが、戦後、私の父親が養蚕のための桑畑をぶどう畑に変えていったそうです。その頃デラウェアの全盛期で、作ればお金になった時代ですね。植えられるところ全てにデラウェアが植えられていました。しかしこのままだと過剰生産になっていくのではないかという不安があり、ワイン用ぶどうに挑戦することになったそうです。昭和49年(1974年)に、父親が酒造メーカーとの契約でワイン用ぶどうの契約栽培を始めました。赤はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー、白はシャルドネというフランスの代表的な品種からスタートしました。

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果樹農家が抱いたワイナリーへの夢

平成になり私が事業を受け継いでからは、ぶどうだけでなく、さくらんぼやラ・フランスなどの栽培を行なっていました。ワイナリーを始めるきっかけは、タケダワイナリーの前社長・武田重信さんとの出会いにあります。武田さんと一緒に全国のワイナリー視察する機会があり、自分でもやってみたいと思うようになりました。1990年頃からその夢が膨らんできたのですが、当時ワイナリーは小規模事業者では免許がりなかった。とにかくハードルが高かったんです。いろんな方が武田さんのもとへワイナリーをやりたいと相談に来ている姿を見ていたので簡単でないんだなと。当時は農地が高くて売る人がいなかったし、貸す人も稀でした。

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木村さんの強い想いが時代を変えた?

正直、夢で終わるのかなと思っていました。でも、このままでは終わりたくない。何とかしてやりたいという気持ちが強くありました。その想いが通じたのか、時代が変わり、農地も担い手不足などの問題で耕作放棄地増えていき、2000年代になってから、あちこちに小規模ワイナリーができるようになったんです。私は2008年から新しい畑を求めて準備しました。ぶどうの収穫量も安定し、2013年に見通しがついたので、いよいよワイナリーを作るため醸造免許の申請をしました。この時点で、すでに67歳です(笑)。上山市や国の地方創生の補助金を活用し毎年畑を増やしてきて、スタート時は4.3ヘクタールだったのが、現在は9ヘクタールになりました。

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自家栽培のドメーヌワイナリー

国内外のいろんなワイナリーを視察して、時間もありましたから自分に合ったスタイルを探していました。当時、日本のワイナリーのほとんどが生食で余ったぶどうを使ってワインを作っていたんですね。でも海外では家族経営で自家栽培したぶどうを使ってワインを作るドメーヌスタイルが主流で、ウッディファームドメーヌスタイルを目指しました。ぶどうに関しては、ある程度栽培の見通しも立っていたので、ワイン専用種に特化することにしました。

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ごまかさない実直なワインづくり

うちは工業的な技術は使いません。濾過せずフィルターにもかけないし、加熱処理もしない。保存するには加熱処理をするか、酸化防止剤を入れるかなんです酸化防止剤はしょうがないから使いますが、最低限に抑えています。また、一般的にぶどうの糖度は18度前後なんですね。ワインはおおよそ糖度の1/2がアルコールになるので、アルコール度数を12%にするには加糖するしかない。それはやりたくないので、自社で糖度20度を超えるぶどうを作ってワインにしています。ドメーヌスタイルだからできることですね。

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まだまだ広がり続ける夢

100年くらい続かないとワイナリーは形にならない。少しずつの積み重ねですね。現在は長女が一緒に働いていて、次女もフランスで修行中です。継いで欲しいと言ったわけではないのですが、いつの間にか2人ともワインの道に入りました。娘たちも私のようにあちこち旅をして見て回った結果、思うところがあったんでしょうね。私は70歳を過ぎましたが、まだまだ夢は広がっていて、娘たちと喧嘩しながら進めています(笑)。現在建設中の宿泊棟も、お客様との関係を築いてファンを増やしていくワイナリーにしたいという想いで計画しました。レストランもあって、平日には県内のシェフをお呼びして食事を提供していただくつもりです。2023年4月にオープンする予定なので、ぜひ遊びにいらしてくださいね。

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木村の「木」で「ウッディ」ファーム。本当に木が好き木村さんは、テイスティングルームに置いてある一枚板のテーブルや、ワインラックも自作、床や壁もご自身で張ったのだとか。訪れる度に変化を続けるウッディファーム。木村さんの広がり続ける夢の先に、上山の豊かな未来が見えてくるようでした。

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