♯11
非現実な世界を楽しんで
小笠原栄子さん
着付け教室・和塾代表。着物のレンタルや観光客への着付けなども行う、上山の観光に欠かせない存在。好きなことを全力で楽しむプロでもある。
着物は究極のおしゃれ
着物を着せるのがとにかく好きなんです。着せ替え人形にハマる女子みたいな。まずタオルとかワタで体型を変えるのがおもしろい。肩が下がっていればワタ入れて、丸太んぼを作る。着物は直線美ですからね。究極のおしゃれだと思います。体型を補正するのにタオルがなければ脱いだ洋服を巻き付けちゃってもいいんです。ジーパンを使ったこともありますよ。汗でビッチョリになりましたけどね(笑)。私、20代から30代前半で着物の概念を崩したんです。着付け業界からはいろいろ言われましたけど。着物は非現実的な世界に浸れる。ディ○ニーランドにいるみたいな(笑)。袂が長いと仕草も変わってきて、違う自分になれるのもいいんですよね。そんな和の文化の良さを伝えたいって思います。
仕事と子育てをしながら免許を取り開業
着物に興味を持ったのは、花嫁修業のために着付けを習ったことがきっかけでした。そこから興味が湧いて、生涯の仕事になりました。本格的に習い始めたのは26歳くらいからです。歯科衛生士をしていたんですが、仕事が終わった後に教室に通って、子供をおんぶしながら免許を取りました。そして、もっと着物の魅力を伝えていきたいと思って、着付け教室「和塾」を29歳の時に開業しました。本当はこの道一本で食べていきたいロマンがあったけど、当時はそろばんが合わないから歯科衛生士をやりながら。子育てしながら女の人が輝く場所を作りたかったんです。
40歳で美容学校に入学
しばらく副業で着付けをやらせてもらっていましたが、髪の毛のセットはサービスだったんです。そうなると美容師免許も欲しくなるわけですよ。それで40歳で美容師学校に通い始めました。担任よりも年上だったので、卒業する頃にはみんなに校長先生って言われてました(笑)。うちのクラスは全員、美容師国家試験に合格させましたからね。普通何人か落ちるんです。私が「宿題やってきたか」とか圧かけていたので(笑)。しかも全員、私が着付けた袴姿で卒業式に出席させました。
着付けで笑わせないといけない
着付け教室には70代の方もいますよ。みんなでコツコツ勉強しています。お互いに着付けのモデルをし合うんですけど、振袖の授業の時はみんなテンション上がるんです。「私ピンク!」とか、「こっちも似合うー!」「サイコー!」って。教室で資格取ってもらった方にお手伝いいただいて、着付けの派遣もやっているんですが、着付けの時にお客様を3回は笑わせろっていうハードル付けてるんです(笑)。私の場合、話が止まらなくなっちゃって「時間ないんですけど」ってお客様に言われたりもしますけど(笑)。コミュニケーション取りながらやって欲しいなって。その楽しさが次の世代に伝わるといいなって思います。
楽しく元気でいれば人は集まる
上山は着物が似合う街なので、皆さんに着せて歩かせたいっていう気持ちはありますね。浴衣のコンテストとか、浴衣を着て街歩きとか、積極的にお手伝いさせてもらっています。すごく着やすいですよ、うちの着付けは。着物を身近に感じてもらえるような工夫もしています。まず楽しむのが一番。レースの手袋はめてもハイネックのセーターを中に着てもいい。何が悪いなんてないと思うなぁ。私自身、人生楽しみ過ぎてる(笑)。楽しまないとね、楽しまないと集まってきませんからね、人は。明るいところには蛾も寄ってきますから(笑)。楽しく元気でいれば上山にも人はもっと集まってくると思うんです。上山が盛り上がるように頑張りますよ、私も。
有無を言わさず元気にしてくれる人、それが小笠原さんだ。お節介を超越した、すさまじいエネルギーを与えてくれる。小笠原さんに着付けてもらって3回以上笑ってから上山の街を歩けば、そこは本当に夢の国に感じられるかもしれない。
モデル:マチェイコ・ハンナ